阿須の市有林(加治丘陵および霞丘陵の一部)の保全構想について

~飯能市の大規模林地開発型の太陽光発電計画予定地の現地視察~  2019年12月視察

 

まず現地の阿須(加治丘陵および霞丘陵の一部)を訪れ、真っ先に感じた事。それは、私たちは、日本最大と言われる関東平野の縁に住みながら、1000haを越すような平地林および丘陵の森林を身近に体感したことは、ほとんど無かったということ。そして1980年リゾート法や相続税のために、私たちは東京の多摩丘陵などをはじめとして、多くの丘陵地、平野の雑木林などを子孫に残せることなく、ニュータウンや、ゴルフ場、工業団地として、失ってしまったこと、そして現在は、ゴルフ場程度の面積を持つ丘陵地や、平地の森林を気軽に利用できないという状況です。しかし、この加治丘陵・霞丘陵は、まだ広大な平地林および丘陵の森林が残されています。私たちが40年近く前に失ってしまった関東平野の西縁丘陵のかつての姿がまだ存在しているということです。

 

私たちがいままで、永遠というものの一端を感じさせた風景とは?という問いを発しますと、かえって来る回答には、幼いころ親しんだ風景、どちからというと、その風景は人工物よりも、限りなく自然に溶け込んだ生垣や壁など人工物や、近所の野山、即ち里山の風景と言われることが少なくありません。しかしながら、こうした風景は、近年の急激な開発で消滅したもので、再現できないものも多いようです。

 里山という何世代も永続する可能性を秘めた風景を失うということ。これは、ある意味、里山の世界で育った世代の人々の心に、現在も強い喪失感を与えているのではないでしょうか?

しかし、今回の現地見学で感じたことは、「失ったと感じた世界はまだ存在している・・、その風景を永遠に失うか、それとも子孫に残せるか・・・、それは現在のあなたがこれからどう行動するかですよ・・」、と「この永遠なる存在(=里山)」の生き残りは、私に語り掛けてくれているかのようでした。

 

現地、霞丘陵の森林の保全状態は大変良好で、天然のモミなどの極相樹種も点在し、その様相は、さながら奥多摩の雲取山山系原生林を彷彿させるものすらあります。加治丘陵・霞丘陵の所有者の主体は、入間市、青梅市、立正佼成会、そして飯能市です。このため、地下の高騰による相続税の支払いのための森林売却⇒開発という森林の全面開発につながりかねない事態は避けられ、昔ながらの薪炭林や、アカマツ林など、多目的な農用林としての林相や原生的な林相など、多様な林相が維持されたものと思われます。

 

 2019年の記録的な豪雨災害となった台風19号の大雨でも、当丘陵地の代表的な河川唐沢川は、流域の林相が、多様な令級、樹種の階層構造発達していることから水土保全機能は極めて良好であり、増水による護岸擁壁の侵食跡が全く無いことが判りました。

 

すでに、青梅市、入間市は、この貴重な里山を次世代に残せる貴重な財産として、保全対象とする条例を定めており、立正佼成会も、昔から山の手入れを会の修養の一環として実施し続けて来たということです。

昨年、2019年は、世界各地で生じた山火事、台風、ハリケーン、熱波、寒波などを受け、世界中の科学者は地球の気候変動による影響は、限りなく危機的な状況になっており、あと、18カ月程度で人類がこれから存続できるか否かの山となっていると指摘しています。そして国連もそれを受け、非常事態声明をいるやに聞き及んでいます。

 

いま、森林文化都市そして、平和都市宣言を表明している飯能市が、なすべきことは何でしょうか?

もちろん、それは森林を皆伐し、大量の炭素を貯留する森林土壌を流出させ、大量にCO2を放出させてしまう森林破壊型のメガソーラー開発ではないことは確かです。

もちろん民間のメガソーラー事業者に広大な森林の一部をちょっと高めのアパート代(年間賃貸料87万円)で、当初、市が保全対象として50億円をかけて取得した、この森林を明け渡すことでもありません。

 

むしろ、森のようちえんなどの森林環境教育の他、森林文化や、炭焼きなど温暖化に対応した森林利用を促進する場として、多くの市民が森林として憩う場として、青梅市等に続き、保全整備を進めるべきではないかと思います。

 

 

 メガソーラー予定地の見学会は、2020年2月13日も「加治丘陵の自然を考える会・飯能」主催で実施されます。ご関心ある方は、是非ご参加下さい!

 

 唐沢川上流

台風19号の豪雨にも関わらず、増水による河岸擁壁コンクリートの土砂による洗掘の影響はなく、水際の壁面も、苔が残っており、急激な水位上昇や、壁面を削る激しい洗掘もなかったように見える。

青梅市との境界付近の尾根道にて