知事への意見書(用水路自然護岸保全活動)

 

 

 

 

 

川崎の用水路と

揚水水車

 

 

 

 

 

 

 

埼玉県知事

大野元裕 様

 

現在飯能市で進行している県単独土地改良事業(※)平松線水路補修工事を、工事区域の農業者の意向および環境等に配慮し、現行工事の中止も選択肢に入れた、見直しを要望します。】

※埼玉のかんがい排水整備事業(県単独土地改良事業関係別表第2(第2条、第4条関係))「埼玉土地改良事業関係補助金交付要領」(埼玉県庁農林部長通知) 当意見書に対する知事からの回答はこちら➥

 

 

飯能市川崎地区の農業者(有機・無化学農薬)の北村と申します。

平素、当地域の有機農業振興において、ひとかたならぬご支援ご協力を賜っておりますことを厚く御礼申し上げます。

 

さて、今回は、表題の補助事業の見直しを要望したく、お便りさせていただきました。

 2020年より、飯能市川崎地区の当方が耕作する、谷地の田んぼでは、用水路(素掘り)が、改変され、下流から、入間第二用水土地改良区による土地改良事業(排水工)により、毎年100mずつ、護岸が2面張りコンクリート化しています。

 

 

 

 

 

工事後の様子

 

 

工事前の様子

(※撮影方向は逆光の関係で、前後逆です)

しかしながら、この慣行の護岸工は、コンクリートが地下水を遮断する性質上、豪雨時、護岸擁壁背面の地下水が飽和しやすく、停滞水が発生しやすくなるため、最近、県内の日高市、高麗川でも19号台風で護岸等施設が多数破損等受災しており、大変問題があります。 

 

※日高市清流橋付近

洪水時の擁壁背面地下水の飽和および洗堀により、完成後2年足らずで受災により変形破損したコンクリート護岸

この工事の影響で川崎地区の工事実施済み箇所では

 

 1.有機農業者等(自然農・自然栽培)の稲作圃場で収穫量の激減

 

 

工事のため、水はけが悪くなり、土壌の粘土化が進んだ結果、作物等の根張りが低下した土壌

2.水路工に隣接した福祉施設(「太陽の丘(飯能市川崎30-1)」)の裏斜面が工事により、土砂崩壊する危険が増大

 

太陽の丘北斜面の工事の様子

工事用地が制限されるため、傾斜のきつい切土、盛り土のみ実施している箇所があり、梅雨等の長雨で斜面崩落するおそれあり

3.当該流域において、水路のコンクリート化すると生息できなくなる、県のレッドリストに掲載される準絶滅危惧種の両生類(二ホンアカガエル、シュレーゲルアオガエル、トウキョウダルマガエル)が消滅するおそれが増大といったことが生じています。

 

 

刈り払い作業中保護した

ニホンアカガエル

 

 

シュレーゲルアオガエル

 

 

トウキョウダルマガエル

 

1について

既に、自然栽培農家としては全国的に知名度の高い、K農園さん(当田んぼでは5反弱耕作)、は工事の影響により当該地で収穫量が著しく減収しています。

同農園は土地改良区に排水対策を要望しているものの、有効な回答がないとのこと。このため、同農園は、これ以上被害が大きくなる前に、当該地を、できるだけ早急に地権者に返地するとのこと。わが家の田んぼ(5反弱(田んぼに開墾する予定地も含む))は、同農園より上流のため、着工は2022年以降ながら、施工されますと、同様の結果となり2年後には、否応なく当該地を撤退することになります。

この件について、2020年12月頃、川越農林振興センターに問い合わせましたところ、同センターの回答は詳細はこちら➥

「土地改良区は、2019年の総代会で地権者の承認を得ている。」

実際は、着工区域川崎地区の総代は、急逝により欠席のため同地区の意見は反映されず

「当該土地改良事業の採用条件は、「2ha以上の受益対象」の存在のみで可である」

「土地改良法第一条第二項および土地改良法施行令第二条第六項の主旨

『環境への配慮』は、必須の義務ではない。」

➥同施行令第二条第六項では、土地改良事業の施行に関する基本的な要件として『環境との調和に配慮』としており、同センターの認識は錯誤)

といった主旨にて(赤字は当方見解)、手続き上問題はないとしています。

しかしながら、2ha以上の受益対象に土地改良事業を実施した結果、今回のように1ha程度の農地が、当該事業によって収穫不良になり、農業者が経営悪化のため「耕作放棄」という撤退に追い込まれることは、本末顛倒としか、申しようがありません。

 

2について、

   すでにお伝えした通りです。2020年には、傾斜地の住宅街の擁壁上斜面が崩落し、人身被害が報告されていますが、コンクリート擁壁による地下水の遮蔽が、地中停滞水を発生させ、斜面土砂の液状化を誘発した主たる原因と考えられます。

(参考:神奈川県逗子市の斜面崩落事故現場より 緊急提言│地球守 (chikyumori.org) 高田宏臣コラム)(https://chikyumori.org/2020/02/21/

 

3について

   埼玉県レッドリストでは、特に用水路がコンクリート化された場合、前足に吸盤等の無い、両生類は、擁壁を登ることが出来ずに、生息出来なくなると報告されています。

(参考:埼玉県レッドデータブック動物編2018(第4版)「両生類」)

https://www.pref.saitama.lg.jp/documents/129694/13reddatabook-ryouseirui.pdf

 

このような事態を避けるため、

県におかれましては、入間第二用水土地改良区に対して、

 

 

 

     圃場排水の円滑化を図るよう、暗渠排水の整備と、既に工事済み箇所については、一部、透水性があり、コストも比較的安価な護岸工(ロックフレーム工)に改修

 

     慣行の護岸工事は、豪雨時地下水の遮断により、擁壁背面の地下水圧が飽和しやすくなり、土砂災害を引き起こしやすいため、今後の工事は必要最小限とするか、上記ロックフレーム工に工法を変更

    レッドリスト等の希少野生生物保護のため、水田の使用がされる見込みのない、耕作放棄地および休耕地では、水路工事を実施せず自然護岸として保全

 

 

 

 

積石を利用した自然に近い護岸の一例(飯能市小瀬戸付近)

以上の3点について実施することを、ご指導頂きたく、以下賛同者連名にて要望します。何卒ご配慮のほどをお願い申し上げます。

 

※なお、ご参考までに、昨年202012月、川越農林振興センター農村整備部の担当部長と、当方が交わした一問一答(詳細はこちら➥)についても記載します。また、2019年には入間第二用水土地改良区に「環境に配慮した工事実施」の要望書を、工事区域川崎地区の住民14名を含む連名にて提出しました。しかし実際の工事では、土地改良区の環境対策は今回指摘しましたように、極めて不十分であったことを申し添えます。

 

20211231日                 

 

          飯能市川崎地区 新規就農者 

              のっぽファーム代表 北村行範

                  

                賛同者(敬称略)

          (自営業・環境活動家)東大和市

          (パーマカルチャー指導者)日高市    

          (環境活動家)飯能市

          (主婦)飯能市

           (種苗販売店勤務)飯能市

          (イラストレーター)飯能市

          (自営業)飯能市

          (会社経営)飯能市

           (林業)飯能市

          (無職)飯能市

          (アーティスト)飯能市

          (料理研究家)飯能市

          (NPO法人運営)毛呂山市

          (看護師)川越市

          (福祉施設勤務)狭山市

          (工芸家)日高市

          (飯能市市議会議員)飯能市

          (アンティークショップ経営)飯能市

              (学習塾経営)飯能市

          (飯能市川崎地区在住地権者)

            (映像制作業)飯能市                   

          (パート)川越市

          (会社員)川越市

          (カウンセラー)飯能市

 

 

                    以上34名